お茶旅号 誕生の物語

——動く茶の間が、走り出すまで。

お茶旅号 海辺に停車
始まりは、一つの問いから
子どもたちが大学を卒業したとき、私はふと立ち止まりました。

「自分は、何のために働いてきたのだろう」

お茶農家として土と向き合い、目を患った父に代わって農作業を続け、子どもたちのために必死にネット通販を立ち上げた。気がつけば、もともと自分が好きだったことから、ずいぶん遠くへ来てしまっていた。

私が本当にやりたかったのは——土地に根差した暮らし。日本の伝統を、次の時代に手渡すこと。
ある言葉が、胸に火を灯しました
「伝統こそが、最も高い参入障壁だ。」

1000年以上続く産業が、日本にはごく普通に存在している。神社仏閣を建て続けてきた宮大工の技術、丹精込めて畳を織り続けた職人の手。そういうものが当たり前に息づく国は、世界広しといえど日本だけだと。

ならば私には、お茶がある。80年続く木村園の深蒸し茶がある。

伝統工法で作ったキャンピングトレーラーで日本中を旅して、四季折々の景色の中でお茶を楽しむ——そんな「お茶旅」が面白いんじゃないかと思いました。
お茶旅号 制作中 宮大工が骨組みを組み立てる
制作の記録
2021年8月 大分県・タイニーハウスジャパンの田上さんを、自作の3Dデータを持って訪問。
田上さんの紹介で、岡山県・杣耕社の山本棟梁と出会う。ほぼ二つ返事で制作が決まった。

2021年9月 契約。当初の予定は3ヶ月——実際にかかった時間は、2年半だった。

〜2022年 木材の乾燥に1年半。一本の杉からわずかしか採れない無節の赤柾を確保。

2023年1月 着工。釘を使わない木組み工法で、柱・梁を一本一本刻んでいく。
柱や梁の一つ一つは小さくても、家一軒建てるのと変わらない手間がかかると、山本棟梁は静かに言った。

2023年9月 杣耕社での木工完了。京都・横山畳店の本格畳が敷かれる。

2024年1月27日 完成。
お茶旅号 内部 茶室の様子
お茶旅号は、商品ではありません
宮大工の技術と、木のぬくもりと、日本の四季と、一杯のお茶——それらが一つになった、動く茶の間です。

量産できない理由は、技術的な問題ではありません。この一台は、複数の職人の魂が込められた一点物として生まれているからです。

木村園創業から80年。先代園主・木村雅美と弘子が育ててきた掛川の深蒸し茶は、今もこのトレーラーの棚に並んでいます。お茶旅号が走り出すとき、その香りも一緒に旅をします。

——お茶の香り立つ、そこが、あなただけの心の茶の間。